ゴルフをやったことが無い人間が、「オレ今日からゴルフだ」といっていきなりグリーンには出ませんし、出たところでゴルフになりません。
「今日からテニスだ」といってコートにでたところでボールはラケットに当たらないし、当たったところでホームランでしょう。  
「今日から水泳だ」といっていきなり海に飛び込めば溺れ死んじゃう。  

ところがボウリングは生まれて初めてやる人も、他人に迷惑をかけることもほとんどなく投げられてしまいます。  
こうした入りやすさのメリットは、裏を返すと抜けやすさというデメリットに連動しています。  

わたくしがLTBを担当するとき、参加者に必ず質問することがあります。  
①今日生まれて初めてボウリングをおやりになる方?  
②今日久しぶりにボウリングをおやりになる方?  
①の質問に手を挙げるお客様はいまほとんどいなくなりました。
スポーツ体験率ナンバーワンのボウリング、いまや誰もが1度はやっているからです。

しかし②の質問にはほとんどのLTB参加者は手をあげられます。
そこでそんな方々にさらに質問します。
Q:何ヵ月ぶりあるいは何年ぶりなのですか?  
驚くべきことに10年ぶり、20年ぶりというお客様がほとんどなのです。  

つまりインストラクター、センター、業界の怠慢でわれわれは今までお客様にボウリングの基本を教えてこなかったのです。ただ転がせばいいという安易さにセンターもお客さまも(お客様は仕方ありませんが)流されてきたのです。

しかし、基本からしっかりとインストラクションを受けた方はやめないで長続きしているのです。  
基本からインストラクションすることの重要性を業界は理解してこなかったし、いまだに理解していないようです。  
さらに、野球の試合は9回戦、テニスは3セットマッチ、卓球は4ゲーム先取が勝ち。
そうした戦う試合のシステムがあるのに、ボウリングではそれを教えてこなかった。
ボウリングの戦うシステムはリーグなのに、そのリーグを伝えてこなかったのです。  

LTBは「ボウリングを学ぼう」という意味で、そのためのプログラムです。
しかるに 「技術的なことは教えるな」 「健康を中心に伝えろ」
などの意見が台頭してきてLTBの精神がないがしろにされているのが現状になってしまっています。

JPBAインストラクター部門もそれに加担して、いまやインストラクション技術がおろそかになるどころか顧みられなくなっているのが現実のようです。
40年以上前の古い教え方が何の疑問も持たずにそのまま踏襲されている。
例えば基本は4歩助走、スイング第1優先主義など。  

健康は付随的価値であり、そのためにLTBを行うのではないのに健康第1主義になっている。
であるならなにもボウリングでなくてもいいのだあってウオーキングやジョギングを教えた方がいいのでは・・・  

例え100歳超えたお年寄りでもスペアをミスするよりカバーできることを望んでいます。
にもかかわらずLTBでは技術は教えない、したがってスパットなんかは教える必要はない
などとぬかすエセインストラクターの出現に、それにまたJPBAインストラクター部も加担しているようでガックリです。

いまさらこんなことを言わねばならない業界にハラがたつこと。

榎田勝志氏のLTBの人集めに関するノウハウは最高で、人集めメソッドに関しては彼の右に出るものはいないし、もしいるとすれば染谷景一郎氏ぐらいでしょう。  
しかしお客様を上達させるということの視点を失えば、ボウリング継続率がないがしろになってしまいます。  
どのようなお客さまも常に上手になりたいと思っている。
そこに目を向けなければリーグからも離脱していきます。

そこで上達させるためのプログラムが必要となる。
わたくしはそれを3ッのプログラムから確立させたいと思っています。  
第1のプログラムは ①LTBベーシック 
第2段階プログラムが ②LTBプラス 
第3段階プログラムが ③LTBコーチング  

いままで業界にはLTBベーシックしか存在しませんでした。場協会から発行させていただいた小役著のLTBテキストがそれに当たります。
そうして間もなくLTBプラスを発表させていただく予定ですし、続いてLTBコーチングをご紹介させていただきたいと考えております。

LTBプラスとLTBコーチングは日坂義人氏の協力を得て作成される予定です。
ぜひともご活用いただきたいし、これをご利用いただくことでお客様のボウリング継続率を高め、リーグボウラーを増やしていくことにつながるのだと確信します。  

①いかにしてお客様を集めるか
②いかにしてお客様に教えるか  
③いかにしてお客様をリーグにつなげるか  
この3ッのアクションのひとつでも欠けたらそれはもうLTBではないのです。インストラクションではないのです。  

そうしてこれまた残念ながら業界はリーグを学んできませんでした。
知っているつもりで間違ったリーグを行っているのが現実です。
本山ボウル然り、スポルト然り。このことは業界全体のテーマとして早急に学ばなければならないと考えます。  

ボウリングにおけるベーシックな戦うシステムであるリーグを今こそ業界全体でとらえなおしを図らねば、これから先ボウリングの将来はこころもとありません。  
IND-HDCP TEM-HDCPの区別さえわかっていない。
ましてやリーグにおける6ヶの基本的ポイントシステムを理解している人もごくまれであるし、ベース&パーセンテージの設定も理解していない。
ひとつのリーグはひとつのクラブ、組織であることも理解されていない。
だからリーグが長続きしないのです。そうして乱れていくのです。
本山ボウルでは5年前にスタートしたリーグが欠けることなく現在も継続していますし、ハタHDCPトリオは昭和39年スタートからハタクローズまで続いていていました。
TBCのレディースは昭和27年から現在も行われていますし、最大の記録は1902年にスタートしたニューヨークバンカーズリーグ。
100年以上続いているこのリーグは現在でも行われていて、参加希望チームがウエイティングだとのこと。  

残念ながら我が国ではCAP会議も行われていない。
1本のリーグを独立したひとつの組織として育て、セクレタリーを育成していく。
こうした現場での教育努力がこれからますます重要になっていくでしょう。それには現場の人間がリーグに精通していなければならないのです。(業界向になり失礼)

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投稿者プロフィール

すみ光保
すみ光保
1935年11月8日、東京都生まれ。1967年1月にライセンスNo.4の第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。プロボウリング協会創設メンバーでもあり、プロボウリング協会に貢献した人物。2014年4月逝去。株式会社スミ、初代代表取締役。

主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。