若き日のわが座右の書、「月下の一群」(堀口大学訳詩集)で知った北園克衛という前衛詩人、
ガキの頃わたくしは何故かこの北園の詩に大きくひかれていました。
というよりわたくしは、いつも、常に、とにかく、前衛でありたいと思ってきた所為(せい)でしょうか。

難解、写実より抽象、アブストラクト、ダダイズム、シュールリアリズム、読んでも意味のわからない哲学書。
など訳のわからないものに引かれていましたし現在もその傾向は強いように思います。

無論そこにいくまでは高村光太郎の智恵子抄や萩原朔太郎の黒猫なんかにおおいに引かれてきたのですが・・・  

金子光晴もその一人です。金子の場合詩ももちろんですがその生き方に惚れてしまいました。
金子の生き方最高ですよ。面白いですよ。
わたくしのいい加減さは金子光晴伝授のところにあるのかも知れません。  
妻がいながら女をつくり、その女に結婚をせがまれると、女房に内緒で離婚届を書き、その女を籍に入れる。

それが女房にバレるとまたひそかに元に戻す。まあひっ茶かめっちゃかです。
お金があれば即座にオンナと美味しいものを食べちゃって始終懐はからっけつ。
オンナが入院すればセックスサービスで膝をコンクリートで血だらけにする。
まあ最高の人間ですね。

金を稼ぐために東南アジアやヨーロッパ紀行を文章にした体験談なんか最高です。     

中学時代のある時、いまは画家である山内勝という同級生の友人が「すみおまえジャン・コクトーって詩人知ってるか?
ときた。  

“わたしの耳は貝のから 海の響きをなつかしむ”  
このコクトーの短詩は特別傑作ではないと思うのですが、堀口大学の訳が素晴らしいのかインパクト強く脳裏に焼きつきました。
昭和20年の前後だったと思います。耳と貝のイメージと海の音。  
またコクトーがレイモン・ラディゲ「ドルジェル伯爵の舞踏会」の巻頭の言葉に  
“あまりにもはやすぎた一輪の白薔薇の開花”   
という献詩があり、17歳で早死にしたラディゲがわたくしに迫ってきたようです。

三島由紀夫もラディゲを大きく意識していたようですね。
ですからわたくしはコクトーからラディゲに入り、そうして三島につながっていきました。

同時に演劇の世界を通してサルトルとカミユに触れ、のめりこんでいきました。

以前書いたような気がしますが一つ橋大学の講堂でカミユの「正義の人々」の主役のカリアイエフを演じました。

いま思い起こしますと、とても硬すぎた演技だったような気がしてなりません。
 
演じてきたわたくしの中で1番重要な芝居は、矢代静一の「城」です。
フランソワ荒井というフランスと日本のハーフ役。この役は気分がいいものでした。
この役を演じるために、ものにはなりませんでしたが、お茶の水のアテネフランセーズにフランス語の勉強に通いましたね。

 西村伊作の文化学院が近くにあり、こここの文学部にも入学しました。
こうして振り返ってみますと意外にもわたくしは勉強家だったようです。

贄田六三郎教授との出会いも文化学院でした。この宗教哲学者も魅力ある先生でした。
YMCAの演劇研究会にいっていた時、これまたあるフランス文学の巨匠(氏名失念)に月1回色々とレクチャーを受けました。
しかしながらアテネフランスも、文化学院も勉強というより素敵な女性がいないか、そちらの方の意識が先行して目をちらつかせていたように思います。  

今月のテーマは影響を受けた文学についてでした。
詩で大きな影響を受けたのがジャン・コクトーであり、レイモン・ラディゲであり、ボオドレエル、アポリネエル、ヴェルレエヌ、高村光太郎、萩原朔太郎、金子光晴、北園克衛。

そうしていま現在わたくしは辺見庸にぞっこんです。
金を稼ぐために詩作するようなやつは本当の詩人ではない。  
“一億光年の孤独”の著者。

この著者は保険会社のお抱えみたいになっていて、詩人とは認めたくないのですが、 しかしさすがプロ、上手いですね。
その技術たるや学ぶところは多い。  

小説では、ワイルドの「ドリアングレイの肖像」には夢中になりました。カミユの「異邦人」。ロートレアモンにも大いにひかれ、そうしてカミユとサルトルですね。日本の作家では三島由紀夫。  

わたくしも詩をかきました。そうして2冊の詩集を自費出版したのですが、ずべて女性へのプレゼントで手元に1冊もありません。

1冊は山内勝のイラストで、もう1冊は自分でイラストを描いたものでした。
本当はここでわたくしの詩の傑作をご紹介したいのですが、残念ながら原本が手元にありませんし、自作を覚えてもおりません。
その内昔の女性に会って、自作の詩集が見つかったら傑作をお披露目をさせていただきます。     

さてわたくしが大いにひかれていた北園克衛の詩を一遍ご紹介しておきましょう。
「黒の装置」 北園克衛
黄いろい三角 は 黒い 真昼であつた
青い四角 は 黒い 孤独であつた
赤い円筒 は 黒い 距離であつた
黒い四角 は 黄いろい 朝食であつた
黒い円筒 は 赤い 散歩であつた
黒い三角 は 青い 太陽であつた
黒いそれら の 黒い それら

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投稿者プロフィール

すみ光保
すみ光保
1935年11月8日、東京都生まれ。1967年1月にライセンスNo.4の第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。プロボウリング協会創設メンバーでもあり、プロボウリング協会に貢献した人物。2014年4月逝去。株式会社スミ、初代代表取締役。

主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。