ネタが無いわけじゃないのだけれど、テメエんとこのセンターの内輪話しや、プロ協会の楽屋落ち話しなどが2ヶ月続いてしまった反省を含めて、今月はちょっといい話?を?

何年か前、日本ボウリング振興協議会[NBCJ]主催で、4日間プログラムの認定インストラクタークリニックを担当していた時の体験。札幌アオキボウルで、朝10時から夕刻18時まで4日間しゃべり通しという結構大変な仕事です。3日目の午後の休憩時間に、当時のオーナーのご子息(彼も認定インストラクター)が、わたくしのところにやって来ました。

「ちょっと来ていただけますか? 見ていただきたいものがあるのですが・・・・。」

アオキボウルは、1フロアに18レーンあり、それが7フロアもある合計126レーンのセンターです。講習会をおこなっていたフロアは8階。彼はわたくしを4階に連れて行きました。

「すみさん、相手に見られないで下さい。顔を出しちゃダメです。ここから覗いて見て下さい。」

柱の陰からみたその風景は、わたくしにとって一種異様な驚くべき情景だったのです。女性の2人連れ。年の頃は40歳前後でしょうか。1人はどこにでも居そうな中年のおばさんでした。もう1人の方に、わたくしの目は釘付けになりました。初めての驚き、そしてショックを受けたのです。サリドマイのハンディキャップをお持ちの女性だったのです。サリドマイドの方に初めて遭遇しました。新聞等で知識としてもっておりましたが。正直に言います。異様な感じを受けたのです。彼女には腕がないのです。肩に直接手がついているのです。背は160cm少し。しかし足が明らかに短い。ラックからボールを取るのにひざまずかなければならない。ようやくという感じでボールを胸のところで抱える。真ん中のドットにスタンスし、3~4秒間ピンを見ているのでしょう? そしてボールを抱えてファールライン手前までいくのです。歩き方もおかしい。普通ではない。見ているところを見られたら大変だと思いました。 そして彼女は膝を伸ばして極端に前傾するのです。屈むのです。 そしてやおら体を前後に振るのです。大きく、3~4回。そして振る反動を利用してボールを離すのです。当然のスローボールです。ボールは何本かのピンを倒しました。満面に溢れんばかりの笑顔をもって、彼女は喜びでアプローチ上を飛び跳ねるのです。いつまでも。人間にあんな嬉しそうな表情があるなんて。わたくしはそんな笑顔をはじめてみたといっていいようです。 幸せそうな様子でした。スペア狙いです。ガター。彼女は本当に楽しそうでした。幸せそうな感すらありました。もし覗き見していることが彼女に知れたとしても、きっと彼女はわたくしに微笑みをくれたのではと思います。

ボウリングはなんてすばらしいスポーツなんだ!わたくしは言葉がありませんでした。そーと、その場を離れて教室に戻りました。受講生の前で話そうと思っても、涙が溢れそうで話すことはできませんでした。青木氏はいつの間にか居なくなっていました。わたくしは何故かいままで一切この話をしたことがありません。 オレはなんて素晴らしい仕事に携わっているのだ!

本来全てのスポーツは、あらゆる人のものです。サッカーだって、野球だって、ラクビーだって、ボクシングだって、8歳から80歳までのスポーツなのです。例えばかつて、ゴルフを亭主族、社用族だけのものにしていたのはゴルフ関係者だったのです。1部の人のスポーツにしてしまっているのは、経営者がいけないのだと思います。もう1度言います。あらゆるスポーツは、全ての人のものです。民主主義の骨幹は、自由と平等にある。誰もが自由に、そして平等にスポーツに親しむ権利があるはずです。スペシャルオリンピックスの活動がスーパーボウル高松でもスタートしました。どうか多くのみなさまの参画を・・・・。

投稿者プロフィール

すみ光保
すみ光保
1935年11月8日、東京都生まれ。1967年1月にライセンスNo.4の第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。プロボウリング協会創設メンバーでもあり、プロボウリング協会に貢献した人物。2014年4月逝去。株式会社スミ、初代代表取締役。

主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。

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