あらゆるスポーツの中で、ボウリングは特にコミュニケーションスポーツとしての特徴を持っているスポーツです。  

投球順番が回ってくる間、友人同士、家族で、チームメンバーの間で、食べたり飲んだりしながら過ごす時間、これらが何より楽しいはずなのがリーグです。  

が、しかし、にもかかわらずその時間を楽しんでいるボウラーが極めて少ない。
というよりいない。
レーンに多人数入れようものなら クレーム多発というのがどこのセンターでも同じ現実でしょう。
 
例えばわが本山の水曜日のDリーグや、土曜日のどんまいリーグなどは、リーグ終了後みんなバーコーナーに集まって持ち寄った お料理などで飲み食いしながら、アフターリーグを楽しんでおられる。これまた素敵な風景です。  

しかし、ボウリングはコミュニケーションスポーツであるという特性を、われわれ業界はお客さまに全く訴えてきませんでした。
レーンが空いているのに何故1レーンに多人数詰め込むのだ、というお客さまの声に迎合して。  

本来ボウリングは1レーン5人チームで戦うものであるという基本形をおいてきてしまったのです。つまり、業界がボウリングを学んでいなかった結果なのでしょう。  

また、飲食しながらスポーツを行うという罪悪感、儒教に影響されたのであろう選手たちの価値観にもよるところ大です。
マラソンでも飲料をとるし、ボクシング然り、ゴルフでは、コースの合間に飲酒OK。

選手権試合ならいざ知らず、日常の楽しみのひとつであるリーグから飲食を追い出したり、コミュニケーションの雰囲気を無くしたりはボウリングの本質を理解していなかったわが業界の大きな過ちと言えると思うのです。  

本山ボウルにおけるリーグの現状は、業界の方向性のひとつ、並びにボウリングはリーグだという指針となるのではないかと自負しています。

しかしながら飲食含めまして大きな反省もあります。  

本来ボウリングリーグは1レーン5人で戦うのが基本形です。
どの機械メーカーであってもボールリターンラックはでワンボックスで(本来はペア-レーンという)ちょうど10個のボールが乗るようにできていますし、ボウラーズベンチも1レーン5人、ボックスでちょうど10人座れるように設計されているのです。
つまり5チームで相手の5人と戦うというのがボウリングの基本型であり、リーグの基本なのです。  

ならば何故それが崩れてしまっているのでしょうか? 
お客さまをボックス8人~10人入れようものならクレームが出ること必至です。
1レーン3人、ボックス6人でもお客さまに文句を言われてしまう。  

ボウリング業界最悪の時代、ちょうど昭和47年~51年頃にかけて、ボウリングを知らない経営者が、レーンが空いているのに何故沢山ひとつのレーンに詰め込むのか?
とのお客さまのクレームに迎合した結果だとわたくしは思っています。  

映画でもお芝居でも、他のスポーツでもだいたい2時間から3時間を楽しんでいるのが普通ではないのでしょうか?  
ボウリングを5人で3ゲームで投げると約2時間30分です。
お客さまは順番が回ってくるのが遅すぎてタイミングがとれない、退屈するとおっしゃるようです。  

その時間に飲食しながらお互いコミュニケーションを取り合ったり、注意しあったりするのが楽しいのです。

そのような交流の楽しさを無くしてしまった。これはボウリングの専門家でなければならない経営サイドの責任なのです。

そのためどこのセンターでもレストランやスナック、バーは姿を消しています。  

では本山ボウルではどうなのか? 
残念ながらもっと反省が必要な現状があります。
現在本山ボウルのリーグは24本、全てシングルスリーグなのです。

ボウリング&リーグの専門家を自負しているわたくしとしては1番残念なところです。  
何故全てが基本的ではないシングルスリーグなのでしょうか?  

まず第1に18レーンという小さなキャパシティ。  
第2にスポルトと星ヶ丘という老舗最優良センターとの競合。  
第3がこの2センターが大きな予算を使ってのLTB作戦。  

この3ッの要因が、本山のLTB参加者を少人数にしています。
結果、例えば6人でチーム戦は行えませんし、10人でもダブルス4チームで半端が出てしまうこととなり、どうしてもシングルスにならざるを得ませんでした。  

結果2年弱で約250名のリーグボウラーと約25本のリーグを行って、LTBは成功しているとみていいのですが、その目的であるリーグは決して成功ではなく、100%シングルスという問題を抱えたままになっているのです。  

リーグ同士を統合してチーム戦に持って行けないだろうかと当然考えるのですが、1度シングルスを行いますと、参加者はチーム戦に抵抗をお持ちになります。
最大の抵抗は「ミスをして 他の人に迷惑をかけたくない」という日本人独特の配慮です。
つまりシングルスであれば自分一人の責任で済むけれど、ということなのです。
日本人らしい他の人に対する配慮が感じとられてほほえましいのですが、これは本来のボウリングではない。

これではボウリングの本当の楽しさを理解できないと5人チーム経験者としては強く思うのです。     

さて、どうしたらボウリングの基本、本来の楽しさをお客さまに伝えていけるか?
おわかりいただけるのか? 5人チームの楽しさを体験いただけるのか? 

ここに業界の共通した大きな課題があると思うのです。

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投稿者プロフィール

すみ光保
すみ光保
1935年11月8日、東京都生まれ。1967年1月にライセンスNo.4の第1期生プロボウラーとしてデビューする。ボウリングインストラクターライセンスはマスター。プロボウリング協会創設メンバーでもあり、プロボウリング協会に貢献した人物。2014年4月逝去。株式会社スミ、初代代表取締役。

主な著作は、子供とボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(ぎょうせい出版)、ボウリング(日本テレビ出版)、NBCJインストラクターマニュアル、ブランズウィック発行マニュアルなど多数。